一人の若者としての魅力
家づくりには大きなお金を使う。
人に託すというのは大変なことだ。
相当な決意もいるだろう。

 それでも託して頂けるのは、設計者としての技量だけではなく、真面目さや素直さ、妥協しない所、何かパワーを感じさせるもの、そういうものが必要なのではないだろうか?

 私自身、クライアントと食事をしながら、自分の将来、夢を話すことも多かった。意図したわけではないが、やはりひとりの若者としての魅力を示せなければ仕事を任せてもらうことはできなかっただろう。

 私は二十代の前半で独立した。当時は設計を自分の生業(なりわい)としていこうという強い意識はなく、設計の仕事はしていても、自分の将来については、まだ迷っていた。また、ここまでが設計、ここからは施工という意識も薄く、設計者も施工者も、つまり、大工もクライアントも自分もペンキ屋もみんな横並びの関係と考えていた。

 色々な仕事を覚えることができたのは、そういう形で現場で多くの人に接してこれたからだと思う。30代半ばになってからは、意図的に設計一本にして質の高さを目指したが、20代に一緒になって仕事をした経験は、その後にも大いに活きているように思う。


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